劇場版SHIROBAKOが面白かったはなし

劇場版 SHIROBAKO を観ました。大変面白かった! アニメ作品の劇場版っていう意味ではとってもよくできた映画だと思います。2020 年幸先いいですね! 今年入って 4 本ぐらい観てなお、まだ気になる作品が結構あるのはとてもよきことだと思います。順当に面白そうなところでいえば 1917 が気になるし、怖いもの見たさ(ダブルミーニング)で犬鳴村も見たいんですよね。
まず間違いなくアニメが楽しめた人達は映画も楽しめることは間違いないと思うので、ぜひ見に行ったほうがいいと思います。これ以降はネタバレも含まれるのでとりあえず劇場に行ってもらって、そのあと読んでもらえれば。
shirobako-movie.com

話の大筋

アニメ版 SHIROBAKO 同様、難儀なスケジュールでアニメ制作を行う山あり谷ありな日常を抱いた作品になります。それでいて、アニメ終了時は順調な状態で終了したムサニが、倒産寸前の状態まで追い込まれている状況から始まるという、終了時点で強かった主人公陣営が弱くなってしまった状態で始まる、いわば続編スタートの背景におけるありがちな手法ですね。
ムサニが追い詰められる背景にあったのは、ムサニの技術力ではなく会社間の契約によって生じた作品のボツ化のよる経営悪化。ここで重要なのは作品が評価されなかったことによる衰退じゃないってことですかね。それぞれの能力はみんな優秀なので、アニメの仕事は続けているけどムサニからはほとんどいなくなってたっていう状況から始まるので、その人達の協力を得つつ、かつての力を取り戻して大団円、という話の展開。話としてはかなりわかりやすい流れなので、アニメを知らなくても楽しめたりするのかな?

好きを仕事にするということ

アニメのころからずっと語られているテーマで、前半では呪いのようにつきまとう言葉。好きなことを仕事にできるのは傍からみれば幸せに映るんだろうけど、実際問題かんたんじゃなくて。でもそれが作品全体としてはポジティブに描かれているのがこの作品のいいところですよね。
作中の多くの人間が、好きを仕事にすることに対する矜持をもってるところがいい。先人がそういてくれていると、あとから同じ道を志す人の心の助けになるよね。そうありてえなぁ。

相互作用

舞茸さんがずかちゃんのオーディションでの声を聞いてシナリオを思いついたり、CG 監督と原画監督の二人の関係性だったり、よりよいものを追求する中でそれが他者に影響を与え、それによってよりよいものがつくりあげられていくっていうのがよいですよね。なんか、そういうレベルの仕事ができるといいよなって思えるというか、ちょっと頑張ってみるかって思っちゃうというか。

キャラクターの成長

声優として活動していたずかちゃんはマルチタレント方面として顔出ししながら色々な番組に出はじめてはいるけれど、声優としての仕事はまだ少ないという状況。三女でルーシーの役を掴み取ったことで前進はしているものの、望むところへはまだ遠いといった状態。そのずかちゃんが声優としての仕事を増やしたいと願い、お世話になった講師に相談し、今回の劇場作品のオーディションを受けられるよう事務所に相談することに。そしてメインどころの役を掴むことに。今作全体のテーマとして描かれているあがかかないと変わらないっていうことをわかりやすく描くキャラクターとしての立ち位置。アニメ本編でのずかちゃんのオーディションシーンは本当に泣けたし、それが次につながっているのが描かれているのがとても嬉しかった。
3DCG クリエイターのみーちゃんは自分にも後輩がついて、それを指導する立場に。がむしゃらに作っていた自分と、後輩との熱量の差に悩んだり、後輩の仕事の進み具合に苦悩したり。今作ではがむしゃらにあがくだけでなく、一歩引いて自分にできること・他人にできることを見極めるという成長をするという話。あがくといってもただがむしゃらにやればいいというわけではなく、周りを見るゆとりも必要で、それって新卒 2 年目ぐらいではとてもじゃないけど気づくことができないことで。続編だからこそ描くことができる内容だったかと思います。
原画担当のえまちゃん。5 人の中で一番かわいい。ムサニから飛び立ち、一人で原画の仕事をもらえるようになっている。一番すきなシーンは宮森がえまちゃんに仕事を依頼する場面。スケジュールについてや進め方について宮森をつめるところ。プロとして、自分で仕事を掴めるようになれるための強さを身に着けていて。それは以前に小笠原さんや井口さんが身につけていた技術で、彼女らに追いつけるようになっているっていう描かれ方をされてたのが大変よかったです。
シナリオライター志望だったりーちゃん。ベテランのライターの舞茸さんに師事していることがアニメで語られてましたが、その関係は続いている模様。ただ個人としても仕事がもらえているということが語られていましたね。やっぱりーちゃんのシーンでいいところといえば、舞茸先生に「商売敵」と言わしめたところじゃないですかね! 他 3 人と比べると劇中での成長場面自体は描かれてないけれど、この一言に彼女の数年分の努力が詰まってますよね。

月の演出

かなり印象に残ったので書いておきたい部分です。宮森が劇場版制作を受けるという決意をして夜道を歩くシーン。空にある月はこのシーンの手前では半月だったのが、さらに陰って三日月に近いかたちになっていて。立ち止まっている宮守の顔も同様に顔の側面の一部にしか光があたっていない状態で。でも、宮森が歩き始めるとどんどん顔に光があたるようになっていき、最終的には顔の全面に光が当たる状態になるっていう場面がとても印象的でした。
立ち止まっていたらそのまま陰っていくだけだけれど、歩きだすことによって光が灯っていくっていうのが、今回の主軸となる話をそのまま表現してて、とってもいいなって。

総括

アニメ版が放送されたのが私が学生のころ、就職する直前に観た話でした。そして今回は入社 5 年目のタイミングでこの劇場版を見れました。それぞれのタイミングで、この作品を見れたっていうのは素直に幸運だと思えました。大変おすすめなのでぜひ見に行ってください。