表題のとおり、年始の空き時間を使ってようやくEver17をクリアしました。
噂に違わぬ、大変おもしろいゲームでした。
20年前のゲームなので今更感はありますが、せっかくプレイしたので感想をまとめておきたいという主旨です。
もちろん20年前の作品ではあるので、驚きというものの鮮度は落ちているのは事実ですが、それを差し引いても面白かった作品なので、少しでも興味をもった段階でこのページを閉じて、プレイしてみてほしいです。
Ever17 とは?
ざっくりいうと、崩壊した海中テーマパーク LeMUに取り残された人間たちが、どう脱出するのかを描いた物語です。
以前購入してプレイし始めたぐらいで書いた記事があるのでそちらを参照いただければと。
cradily.hatenablog.com
途中まではPSP版でやってましたが、思ったことや気づいたことをメモしながらやろうとした際、やはりPC版のほうが都合がよかったので、一人目のルートの途中ぐらいからPC版に移行しました。PC版は以下のサイトから購入できます。
maginodrive.jp
改めて商品ページを見るとすごいサバイバル要素強めな紹介文ですけど、そこまでサバイバル感はないです。リソースが失われていく緊迫感みたいなそういう雰囲気ではない。
あと、このPC版自体の上記サイトでのリリースも2014年なので、一部Win10環境に対応できてない部分も見受けられました。私の環境だと一部ムービーが正常に再生されない。PSP版が手元にあるのでムービーはPSP版で確認することにします。
もう一点、デフォルトのフォントが妙に縦長になっていて読みにくいというのがありましたが、これはフォントの設定変更で回避可能です。やり方を紹介してくれているツイートを見つけましたので貼っておきます。
Ever17Win 版の Win10 でのフォント縦長問題、Ever17PC.ini をバイナリエディタで弄って "VL ゴシック" か "IPAゴシック" を使うようにすればましになることを確認した。(1枚目: デフォルト, 2枚目: VLゴシック, 3枚目: IPAゴシック) pic.twitter.com/xA3iIBmJQh
— t_takata (@t_takata) May 3, 2017
以下、ネタバレを含みます。ご注意ください
物語の根幹部分にふれる際にはまたクッションをはさみます。
概要
物語は一人の青年『倉成武』と、記憶喪失になって自分の名前もわからない『少年』の2つの視点で進んでいきます。どちらの視点で進むかは物語序盤の選択肢によって決まります。2つの視点で進みますが、場面は完全に同じではなく、発生する出来事などに差異があるという感じです。
攻略対象のキャラはそれぞれの視点ごとに決まっており、両視点それぞれ2キャラずつルートが用意されています。その4ルートをクリアすると最終ルートが解禁されるという、まあよくあるシステムですね。最初はそれに気づかず、少年視点で全員分のルートが用意されてると思って選択肢のしらみつぶしをしてました。
上記の選択画面でも選択肢が上に表示されているという点と、物語の展開的にも武視点からプレイすることが想定されていそうな気がしますが、私は少年視点からプレイしてしまいました。特段問題はないと思いますが、優ルートの印象には影響があるかも。
各ルートの感想
優
かつてLeMUで働いていて、行方不明になった優の父親の情報を探すというのが主題でした。
正直作中随一の印象の薄さでした。キャラクター自体に魅力がないとかそういう話ではなく、このLeMUという舞台背景や各キャラの立ち位置といういわば共通ルート部分での情報自体が多いということと、優ルート自体がこのLeMUという舞台の『胡散臭さ』についてのアプローチのような役割が大きいため、キャラクターに対して意識が向かいにくいというのがあると思います。
沙羅
沙羅と主人公の過去についての物語です。
割ととんでも設定がぽんぽん出てきますが、存外すんなり受け入れられました。こっちもつぐみルートを終えたあとだと提供される情報を受け入れやすいのかな。改めて思い返してみるとやっぱり武視点先にやるべきだったようにも思いますね。
LeMUという閉ざされた世界の中で、『自由』というテーマが語られるというのは面白かったです。どちらの状況も私は想像の及ばない範囲ではありますが、崩壊しゆくLeMUのほうが彼女にとって『自由』であったっていうのは、このLeMUから脱出したいという気持ちをもって読み進めていたプレイヤーを巻き込んで皮肉が効いていていいなと思いました。
空
特殊な事情をもったLeMUのスタッフである彼女との交流をメインに描かれるルートです。
彼女の特異性を活かした物語で、個別ルートだとダントツで好きでした。そもそもキャラデザが好みというのもありますが。物語の根底に関わる概念を無理なくルート内で描けてるというのも評価したい点ですね。ガラス越しに化粧したり、触れ合おうとしたシーンがルートの中では好きですね。
つぐみ
少年視点では謎の塊だった少女、つぐみの正体について語られるルートです。
武視点が先のほうがいいなとは思いましたが、つぐみルートは個人的には最後で正解だったと思います。ここで明かされる真実からシームレスに最終ルートに行くのが一番受け入れやすいじゃないかなと。
空ルートの次に好きなルートです。優>沙羅>空>つぐみという順でやったので尻上がりに面白くなっていきました。今まで少年視点では取り付く島もないという言葉がふさわしかったつぐみの可愛らしい面がいくつも見られるのが、なんかようやく到達できたなって感じがして好きです。特にココに対する態度の柔らかさがめちゃめちゃ好きなんですよね。というか少年視点のつぐみの状況が特殊すぎるので、本来のつぐみはこっちなんだろうな。
以下、物語の根幹に関わる重大なネタバレを含みます。
最終ルート
4人のルートをクリアすると、『ココ編』がプレイ可能になります。私は武視点からはじめましたが、少年視点からでも入れるみたい?物語は武視点と少年視点が切り替わりながら進んでいきます。
このルートでは今までのルートで明かされてきた事実と、語られてはいたものの謎のままとなっていた現象について、解答が提示されるルートとなっています。まさに怒涛の展開というにふさわしい。
このルートではいくつもの衝撃で殴られることになりますが、その中でも一番語りたくなるのは『武視点での少年と少年視点の少年が同一人物でない』ということが判明するシーンですね。鏡に見たことのない金髪の少年が映るシーンは息を呑みました。プレイヤーの混乱をちゃんとリンクさせるいい演出だと思いました。主人公は立ち絵が表示されないっていうADVゲームの当たり前をうまく料理したなと。
そして少年視点での倉成武も武視点での倉成武ではなく、武視点での記憶喪失の少年だったというのも驚きでした。そして驚きとともに、かつて自分の命を守ってくれた憧れの青年を騙るっていうのは、その青年と好きになった少女を守るためとはいえ、心中複雑だったろうなという切なさに似た気持ちでいっぱいになりました。作中ではあんまり深く掘られませんでしたけどね。つぐみからみた桑古木少年はどんなふうに写っていたんだろう。
物語の根底、そして高く評価される理由の多くは、物語をハッピーエンドに導くためには武と少年と、そして『プレイヤー』の存在が必要であるとしたこのシナリオ展開なのかなと思います。本当に打越さんのシナリオは、いい『ゲーム体験』を提供することに対してずば抜けてるなと。優ルートおよび空ルートで語られた第三視点こそがプレイヤーであり、そのプレイヤーが干渉することでしか物語は本当の結末を迎えられない。そしてその第三視点はもともと少年視点として物語と組み込まれていたものが、引き剥がされて『プレイヤー』として物語上にキャストとして割り振られるという演出。この演出のすごいなと思う点が、少年視点として物語に没入していた人間、武視点や少年視点での物語を俯瞰して楽しんでいた人間のどちらにも、この巻き込み方が通るようになっていることですね。さらに、『プレイヤー』としての役割を全うしてハッピーエンドを迎えられたことをココが称賛してくれるというのも、大団円の中で疎外感を抱かせないのがとてもすきです。そこでまた桑古木少年に対しての思いが募ったり。幸せになってくれ桑古木少年。
少年と沙羅の兄弟、そしてそれにつぐみと武を含めた親子関係、そしてかなり特殊ですけど田中洋一、優春、優秋の親子関係。全体を通して恋愛というよりも家族愛が大きく描かれてましたね。正直ギャルゲーだと思って始めたのでそこは想定外でした。恋愛ゲーとしての色が一番強かったのは少年視点の優ルートだったのか。そこが一番薄味に感じてるっていうのもまたなんとも。
総括
全部の疑問に明確な解が与えられたかというとそうでもなかったりしますけど、それよりも受けた衝撃と伏線回収の気持ちよさが上回ったので、最終的な読後感は非常に清々しいものでした。名作と語られるのも納得でした。逆に、最終のココルートをどれだけおいしくするかという点に特化されたゲームだと感じたので、他の一般的なADVゲームと比べると個別ルートの味は薄いかもですね。
あとは立ち絵とかCGの作風の古さはやっぱり20年前のゲームなので気になりました。特に優と沙羅の立ち絵は結構気になりました。逆に空、ココはあまり気にならなかったかな。もっと細かい話をすると、つぐみの斜め後ろ見てる感じの立ち絵は好きです。
プレイメモ
以下、私がプレイしながら残したメモ。
特に意味はないですが、プレイした方ならなんとなく「あーーーここね」みたいに思ってもらえるんじゃないかと思います。
1周目(少年)
- 態度の変わった優、同じ人格?
- 時間軸が違う?
- 大事故にあって脳に致命的な損傷を受けた
- 親指の傷痕→沙羅のペンダントのかけらが埋め込まれていた
- 浸水していない第4区画
- 生体反応は6→空はカウントされてるのか?
- 1気圧
- 少年は入場ゲートの話を記憶していない
- 池に落ちた時が記憶の先端
- つぐみ、記憶喪失について、奴らの仲間
- 変換器を外せない理由→空がAI
- 薬品会社がテーマパークをつくる理由→その下に研究施設があり、それのカムフラ、および資金調達
- 温水による発電を行なっている
- つぐみ、奴らに利用されている
- 優、お父さんの手がかりを探している
- 西暦2017年、ほんとうに?
- 空は減圧症にかからない?→AIだから
- 119時間後に隔壁崩壊
- 空は、今はいいの→空がAI
- 武の鳥目→少年の目が見えすぎてる?→赤外線が見える
- 発電室機器察知
- 第三の目
- 電気がつくまで17秒
- 空ってほんとに人間なのか?→AI
- つぐみが電気を消した理由→赤外線が見えることが影響している?
- カンを蹴った人
- 憩いの場で観た武の正体
- 暗がりでも少年が人を認識できる→赤外線が見える
- ペットのクローン
- 天井に見えたなにか
- 武が怒っている本当の理由
- LeMU 17年前の事故
- 海月の 虚空に秋涼し 時鳥 17文字
- 武の隣のビール
- 優の父親が34年前に死んでいる→17年前の事件の記憶を埋め込まれている?
- 15年前に死んだ優の母
- ティーフブラウ→30数年前流行したウィルス
- タイムスリップ説
- 石像に刻まれた傷
- 子守唄
長弓 背負いし 月の精 夢の中より 待ちをりぬ
今宵やなぐゐ 月夜見囃子 早く来んかと待ちをりぬ
眠りたまふ、ぬくと丸みて 眠りたまふ、母に抱かれて
真櫂掲げし水の精 夢の名より 待ちをりぬ
今宵とりふね うずまき鬼 早く来んかと待ちをりぬ
眠りたまふ、ゆるゆる揺られ 眠りたまふ、海に抱かれて - 沙羅と謎の少女を勘違いしていた理由
- ヒンメルとは →ココがこの扉の先に透けていった
- 体調が悪くなっていた 気圧障害?
- 沙羅の『精算しなくてはいけないこと』
- 田中 優美清秋香菜
- 秋という名前の春があってもいいんじゃないか
- ブリック・ヴィンケル (マン?)
- LeMUが傾いている
- 少女の名前『ココ』
2周目(少年)
- 少年に声がついている
- ぼくが、向こうにいるのが見える
- 沙羅との記憶 どちらの? →少年との記憶
- ベッドから這い出したものとは
- 光がクロスする演出、混線?
- 最初の寝ている話が飛んでいる、倒れて救護室に運ばれた話と、LeMUが沈むまでに長い時間が流れている? そもそもこれは同一人物なのか?
- エレベータの上にいた沙羅を迎えに行くときもココの存在を感じている
- つぐみが武に対して面識があるような言葉をかけている
- バルブを操作する時のフラッシュバック
- 風景の変わった小部屋、月明かり→赤外線
- 痛いよぉ 誰の声?→かつての沙羅
- こうなることは最初からわかっていたくせに
- LeMUの事故の際、一人で逃げた?→LeMUの事故ではなくかつての研究施設から
- 豹変した少年
- 優が見えていない部屋の暗さを少年は視認できている→赤外線
- ペンダントのホログラムの人間の正体
- 子守唄、沙羅は少年がこれを記憶していることを期待している?
- ホログラムが優と武には見えていない
- 骨折後に見えた夢は優のルートとは異なっている
- 沙羅には兄がいた→少年
- 指の傷跡が消えた、ペンダントのかけらが体内に埋め込まれていた
- 赤外線が見える特殊な視力の持ち主(少年と沙羅)
- 沙羅と少年は兄弟
- 少年と沙羅はライプリヒの研究施設に引き取られた
- 記憶は戻ったが名前が思い出せない
- 生体反応1とは、ココ?
3周目(少年)
- ポケットに入れて消えたタツタサンド
- 沙羅と優以外のルートには入れない?
4周目(武)
- レベル デルタ ティーフ ブラウ
- 沙羅じゃなくてココがいる、少年視点から見て前回の周回の話?
- 優の名前が違う、優美清秋香菜は優の娘?
- ココが優をなっきゅと呼ぶ、ココと沙羅の関係とは
- ココの連れている犬ピピ、これが生体反応の数と関係している?
- 少年の記憶が維持されない
- 電気がつくまで17秒かかることもつぐみは知っている
- 空は見られて初めて存在する、それは果たして空だけに言えることなのか?
- つぐみは休みたくて電気を消した、つぐみは意図的に前周回と同じことが起きるように行動している?
- こっちでも缶は何者かに蹴られている
- 数を数えている何者かの存在、少年視点では現れなかったはず
- 前周回があったのでホットドッグがあることをつぐみは知っていた
- 2階でなにか起こることを少年が予知している
- 空の寝坊、定期メンテの影響
- 倉庫の事故は前周回で起きていた
- 2010年 クローン法 少年視点での出来事にはクローンが関与しているのでは?
- Wではなく、Y 進む先が2つでも、来た道は1つなのでY
- Aの道を歩むあなたと、Bの道を歩むあなた
- 優にはサバイバル経験がある
- つぐみの回復は順調だが、なにか不満に思うところがある?
- つぐみの神隠し
- 少年に空が見えていない、ジャミングの影響で少年にのみデータが送信できていない?
- つぐみの足が回復している→死にたいという発言、なにか不老不死のようなものが関与している?
- 空は24歳、歳をとらない つぐみの存在とリンクさせている?
- つぐみは小動物を飼っていた?
- つぐみの本質とは
- ココの石像彫刻 ココはチャミの存在を認識していた
- チャミの活動範囲によって、生体反応の数が増減していたことに理由がつくのでは?
- スパコンとレミの通信経路が残っているのではないか
- つぐみの中身がころころ入れ替わっている? ココの前では穏やかなだけ?
- 信じて願えば叶い、実現する キュレイ
- HIMMEL 空の名前→Skyではなくheaven
- ココの出血、ティーフブラウに感染
- ピピが加えてきたアンプル
- TB:LeMUの下で研究されていた
- 研究施設IBF
- 研究者はIBFからLeMUに移動しようとしていたはず
- ココの父親が研究員、見学に来た際に感染した?
- ティーフブラウの感染が明るみに出ていない、TBの感染爆発は少年視点から30数年前→武視点は17年前のLeMUの事故には該当しない?
- あなただけが無限ループに取り残されている、生体反応1
- 研究員の娘を頼む、とはココのことではなく優のことなのでは?
5周目(武視点)
- つぐみは減圧治療が必要ないと言っている
- 生命は無条件で肯定されるべきだ
- 12年前、2005年につぐみが感染している、キャリア→TBではなかった
→そうするとつぐみの7日に死ぬという予言はTBの発症を予期していた? - つぐみ23歳
- つぐみは不死となるウィルスに感染している
→少年視点のつぐみと武視点のつぐみは同一存在でありそう、優は別、少年も別なんじゃないか? 武もここで感染していたのであれば同一存在となれる - チャミもウィルスに感染している、握りつぶされても復活した
- 記憶喪失の少年の隣で起きた、この少年とは同一なのか?
- ライプリヒのデータベースにつぐみの症例のデータがある→IBFについて知っているのはつぐみがかつていた施設だから?
- ウィルスの名前はキュレイ
- LeMUの崩壊事故のきっかけはIBFのウィルス流出
- つぐみの抗体をつかってTBを防ごうとした
6周目(武視点)
- エレベーターに閉じ込められたココ、もうひとりの声とは?→沙羅?
- ココはなぜ武の名を知っている
- 少年の服ってこんな色だったっけ?
- 視覚を奪われた時、存在の証明ができるか?
- 物語がリンクし始めた
- 両視点での少年の記憶がリンクしている
- ココ「連れて行ってくれないからだよ」
- 少年が自分の年齢を認識している、記憶がなかったはずでは?
- 武視点の少年は少年視点の少年ではない
- 少年がクローンなのだとしたら、誰の?
- ココも兄に助けてほしいと望んでいる、沙羅とココの関係とは?
- 沙羅は少年との二卵性双生児
- ココが沙羅の歌う子守唄を知っている
- この歌、最近覚えたばっかだから
- 浦島太郎
- 少年の名前は「ホクト」
- つぐみは月海とかく 海月じゃん
- 優(春)は罪を犯した、罰を受けるのは私だけでいい
- 優(春)と優(秋)は双子? ではなぜふたつの物語が進行している? クローン?
- うみつきの こくうにすずし ほととぎす→ほくとのこすうみ すぎしときに つうず
- ココは異次元の生命体と会話していた
- ママに教えてもらった子守唄だから、月と海の子守唄 ココはつぐみの娘?
- ココと少年、そしてプレイヤーは第三の目を持つ存在
- ココがもう一度逢いたい、以前にどこであっている?
- キュレイは赤外線視力も有するようになる
- ペンダントに焼き付けてあったのは武
- 倉成武は名前こそ同じだが、違う存在だった?
- きぐるみを着ていた理由